リストラの向こうにあった神様の素晴らしいご計画

イスラエル榊

(神奈川県横浜市)

 

会社が経営破綻、リストラ

 

 「えっ、リストラ!」それは、2010年1月19日朝から冷たい雪まじりの雨が降っていた日でした。

 夫が勤務していた会社が、東京地裁に会社更生法の適用を申請しました。負債総額は2兆3千億円となり、事業会社としては戦後最大の経営破綻で政府の管理下になりました。

 夫から「1万6千人がリストラされる。覚悟していてくれ。」と言われました。それは、3人に1人の割合で特に50歳以上は大半の方々が対象になっ ていました。退職金、企業年金はいったいどうなるのだろう。就職の超氷河期と言われているこの時に、60歳になる夫の再就職は非常に厳しく望めるような状 況ではないと内心は不安でいっぱいでした。

感謝しよう!

 しかし、私の口から出た言葉は「37年間一生懸命働いてくれてありがとう。本当にありがとう……大丈夫! 神様が共におられるから。これから新し い事が始まるのよ。感謝のお祈りをしよう。」だったのです。「神様、感謝します。あなたが私達を愛しておられ、良き事の働きのためにこの問題が許され、こ の悪いと思われる事の向こう側に神様の素晴らしい祝福のご計画がありますから感謝します。必ずこの事を通して主の栄光が豊かに現されますからありがとうご ざいます。」と祈ると心に平安と確信が与えられました。夫の目が涙でうるんでいました。

 退職は1月になるかもしれないと言われていましたが、数か月の延期となりました。社員の方々からは「これから、私達はどうなるのでしょう。子供の 教育費がかかります。」「家のローンの返済がまだ残っています。」「年老いた親の介護をしなければなりません。」と言われ、夫は残された期間なんとか少し でも力になれればと、毎日帰宅は真夜中でした。背中がだんだん丸くなっていく夫のうしろ姿を見て、私は自分のことしか考えていなかった事に気づかされまし た。「神様お赦しください。」会社の事、社員の方々とご家族の事を真剣に祈り求めました。

 

「事は成就した」

 

 7月のパトモス・テサロニケチームに神様から「行きなさい」と語られましたが、義父母の介護、夫の健康状態も心配でこのような時期に行かせてくだ さいとはなかなか言い出せませんでした。しかし、神様に祈り求めておそるおそる夫に言いました。「パトモスチームに行かせてください。」夫の答えは「パト モスで祈ってきてくれ。」でした。ハレルヤ! 何かが大きく変えられていくのを感じました。

 パトモスで祈っている時に黙示録21:6「事は成就した。」の御言葉が与えられ、確かに主は圧倒的な勝利を与えてくださり、主の栄光を現してくださると確信しました。

「2番目に来る話に御心があります」

 会社のいろいろな事柄の整理がついた9月30日、37年間勤めた会社を退職しました。

 退職後すぐに就職を支援する人材紹介の会社に登録し、面接の受け方、履歴書の書き方などのセミナーを受け、今までは採用する側でしたが、される側 に一変しました。担当者からは「大卒の就職率が60%と言われている中で、60歳以上の就職は非常に難しい状況です。お知り合いとか縁故で探されることも お勧めいたします。」まさしく就職の超氷河期でした。

 枯れ葉が舞う頃、以前仕事上で関わったヨーロッパに本社がある外資系の会社から、これからアジアの働きを強めるために新しいプロジェクトを計画し ているので、ぜひいままでのキャリアを生かして働いてほしいという話がありました。今まで夫がやっていた仕事の経験を活かす事ができ、職場は国際色豊か で、ヨーロッパ出張もあり、私たちが願っていたことでした。私は聖所から流れ出る水ミッションのヨーロッパ部門を担当しているので、これでヨーロッパ宣教 の道が大きく開かれていくと思いました。

 「やった。ばんざい! 神様感謝します。この就職先が主の導きでしたら、必ず決まりますように。御心に従いたいですから私にわかるように教えて下 さい。」と祈り、教会の長老牧師ご夫妻に祈っていただきました。「ストップにならなければ、この話を進めていきなさい。しかし2番目に来る話に御心があり ます。」と預言が語られました。私は「え〜っ、そんな。この話は1番目です。もうこれを逃したら2番目なんて来ません。」と思いましたが、「主よ。あなた が私達を導いておられる最前の計画の道を歩むことができますように助けてください。」と祈りました。盛岡の地でも毎週水曜日ふたりの友人が、夫の救いのた め仕事のために断食の熱い祈りをささげてくださいました。

 

神様はすべてをご存じ

 

 数日後、勤めようとしていた外資系の会社から、新しいプロジェクトの企画内容、予算を再検討することになり、時期を遅らせることになりましたと連絡が来ました。まさしく神様からのストップでした。

 11月1日義父が脳梗塞で倒れ入院、2週間後義母が心臓疾患で意識不明になり、救急車で大学病院に運ばれ入院しました。2011年1月9日実家の 母が天に召されました。夫が家にいてなにかと助けてくれたので、2人の看病と介護、母の死の悲しみを乗り越えることが出来ました。もし最初の話がスムーズ に進んで決まっていたとしたら11月1日から勤務で、夫はとても忙しくなっていたはずですし、休めるような状況ではなかったと思います。神様はすべてをご 存じだったのです。

 刺繍をしている時に裏側だけを見ると、どうしてこんなところに糸が出ているのか、なぜここで糸を切ってしまうのか、なんだかごちゃごちゃで理解す ることが出来ません。しかし、完成して表側を見たときに、ああなるほど、この色、この形、この表現のためにあそこで糸が切れていた。全部このためだったの だとわかります。そのように問題が起こるとどうして私にこんな事が許されているのだろうと心が痛みますが、それは、まだその事柄を通しての神様の計画を見 ていないだけで、やがて具体的に素晴らしい神様の祝福を見ていくということなのです。

 

1年後のちょうどその日に

 

 1月19日1通のメールが届きました。ロンドンに転勤していたとき、家族ぐるみで親しくさせていただいた方から、ある公益法人で民間企業からの優 秀な人材を探しているのですが、働いてみませんかという内容でした。外資系の企業よりもさらに良い条件でした。それはちょうど1年前の1月19日、夫が勤 務していた会社が、東京地裁に会社更生法の適用を申請し、夫と共に感謝の祈りをした日であり、神様が語ってくださったように2番目に来た就職先でした。

 2月1日からの勤務と正式決定になり、登録していた人材紹介の会社に就職が決まったことを報告に行きました。担当者が「幸運ですね。」と言われたので、夫は「妻の祈りです。」と答えたそうです。神様をあがめほめたたえました。

 神様は私達一人ひとりを愛しておられ、私達の人生に素晴らしい計画を用意しておられます。それは祝福であり、勝利であり、恵みの計画なのです。ハレルヤ! 主の御名をほめたたえます。

 

 「いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべての事について、感謝しなさい。これが、キリスト・イエスにあって神があなたがたに望んでおられることです。」テサロニケ人への手紙第一5章16節から18節

 

 

 

月刊「雲の間にある虹」2011年4月号に掲載より転載 雲の間にある虹出版