まさかの「請求書」…感謝したら白紙に

ヨハネ谷口(山梨県甲府市)

 

 楽しみに待っていた大家さんからの連絡

 

 私たち家族は、2011年5月21日に引っ越しをしました。

 荷物を運び出す作業が終わり、最後に大家さんの所へあいさつに伺った時、今入居している方が全部出たらこのマンションはやめて更地にしてしまうという話をされ、「預かっている敷金をお返ししますので、新しい連絡先を教えて下さい」と言われました。

 確か敷金は家賃の2カ月分でしたので、半分くらいは戻ってくるのではないか、いやもしかすると全額かも、などと期待は大きくふくらみ、それから連絡が来るのをまだか、まだか、と楽しみに待っていました。

 大家さんからの郵便が届いたのは、2カ月ぐらい経ったある日のことでした。私はうれしくて「大家さんありがとう!」と喜び踊りながら、その封筒を開けたのです。

 

 

まさかの「請求書」

 

 するとおかしなことに、中にはなぜか「請求書」と書かれた紙が1枚だけ入っていました。そして、そこには修復を必要とする項目がズラッと10カ所以上並べられ、最後に計6万円とありました。

 「えっ、まさか?」と、もう一度確かめましたが、確かに届いたのは送金のお知らせなどではなく、敷金プラス6万円の請求書だったのです。

 お金が返ってくるという考えしかなかった私はショックを受け、しばし呆然となりましたが、話が違うじゃないかとすぐに大家さんに対する怒りが湧き上がってきました。

このことも感謝しよう

 しかし、そういう思いを持ちながらも、同時に心の中では「このことも感謝しよう」とか、「喜ぼう」という思いが強く響いてくるのです。

 私たちは教会で、良いことも悪いこともすべてのことについて神さまに感謝することや、悪く見えることの後ろに素晴らしい神さまの計画があることなどを学んでいたからです。また、実際に感謝することを通してたくさんの恵みを体験していたのです。

 そこで、まず大家さんに対する悪口を悔い改め、すぐに感謝をしていくことにしました。「お金が返ってくると思っていましたが、逆に請求書が届いたことを感謝します」「6万円も払えることを感謝します」「このことの後ろに素晴らしい神さまの計画があることを感謝します」などです。感謝し、神さまをほめたたえていくと、苦々しい気持ちから私たちは解放されていきました。

 すると、請求書に1つだけ間違いがあることに気が付かされたのです。

 家を借りた際に、1カ所だけ扉に穴が開いたままになっている部屋があり、それを了承して借りたのですが、その部分の修理も請求されていたのです。それは本当に小さな間違いで、金額的にも微々たるものでしたから、わざわざ指摘するほどのことでもなく、妻もそのままでいいんじゃないと言うので私もそうしようと思ったのですが、なぜかその時、大家さんに電話したほうがいいと思ったのです。

 そこで電話を掛けると大家さんが出られたので、そのことだけ確認をしてもらえませんかと普通にお願いをしました。

 

 

6万円の支払いが一瞬にしてなかったことに

 

 すると、驚いたことに電話口で大家さんが涙声になり、こう言われたのです。

 「谷口さんの電話は、私に対する文句でも怒りでもなく、抗議さえも何も感じなかった。それどころか私を尊敬してくれていて、ただこちらの誤りだけを丁寧に伝えてくれるものだった。…どうもありがとう。この件は、もうなかったことにして下さい。これからもがんばって下さい」

 私はびっくりしました。なぜなら、この大家さんは元大工さんで、いつ会っても元気で威勢がよく、とても強い人だったからです。神さまが働いて下さったとしか言いようがありません。また、6万円の支払いが一瞬にしてなかったことになったのです。心から主をほめたたえ、主を賛美しました。

 それと共に、感謝しておいて本当によかったと思いました。

 なぜなら、感謝するまでの私は、大家さんのことを尊敬するどころではなく、逆に文句でいっぱいだったのです。もし、感謝せずにそのままの自分で電話を掛けていたなら、間違いなくこのような素晴らしい結果にはならず、今も6万円の支払いに苦労していたかもしれません。

 神さまの言葉は真実で、その恵みは本当に素晴らしいです。心から主に感謝します。

 

月刊「雲の間にある虹」2011年10月号より転載